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2004.05.18

「悪」それは戦禍、あるいは神

俺の敬愛する詩人アルテュール=ランボー"Arthur Rimbaud"の
普仏戦争を題材とした初期詩篇。

Le Mal

Tandis que les crachats rouges de la mitraille
Sifflent tout le jour, par l'infini du ciel bleu ;
Qu'e'carlates ou verts, pre`s du Roi qui les raille,
Croulent les bataillons en masse dans le feu ;

Tandis qu'une folie e'pouvantable, broie
Et fait de cent milliers d'hommes un tas fumant ;
--Pauvres morts ! dans l' e'te', dans l'herbe, dans ta joie,
Nature ! o^ toi qui fis ces hommes saintement ! ... --

-- Il est un Dieu, qui rit aux nappes damasse'es
Des autels, a` l'encens, aux grands calices d'or ;
Qui dans le bercement des hosannah s'endort,

Et se re'veille, quand des me`res, ramasse'es
Dans l'angoisse, et pleurant sous leur vieux bonnet noir,
Lui donnent un gros sou lie' dans leur mouchoir !


「悪」 (大島博光訳)

一斉射撃の吐き出す赤い痰が 一日じゅう
はてしない青い空に 唸りをあげている時にも
それを興がる王のちかく 真紅の大隊や
緑衣の大隊が 砲火の仲にどっと倒れる時にも

恐るべき狂気が十万の人々を打ち砕き
血にまみれた 屍の山に変えるときにも
夏の中 草の中 自然の歓喜の中の哀れな死者たち!
おお この人たちを厳かに作りた給うたおん身 自然よ!

そのときにも 神は 緞子の祭壇布や 香や
大きな黄金の聖餐杯に ほほ笑みながら
讃美歌のふしにゆすられて まどろんでいる
そうして母親たちが 怖れに身をすくめて
古びた黒い帽子の下に泣きながら ハンカチに
包んだお賽銭を投げる時 神は眼を覚ますのだ

rimbaud3

 ランボー (J.N.Arthur Rimbaud, 1854-1891)は、フランスの詩人。象徴派(Symbolism)のヴェルレーヌによって見出され、「早熟の天才」と呼ばれた詩人の代表作は「地獄の季節」「酔いどれ船」「イリュミナシオン」など。15歳から19歳というわずか4年間にその全文学的生涯を全うし、以後一篇の詩も書くことなく、イエメンのアデンにて「ムスリム商人として」37歳でこの世を去った。
 
 この詩人については、 わが国でも堀口大学、小林秀雄、中原中也など多くの訳者によって翻訳の試みがなされてきたが、多少の誤訳はあれどいずれも甲乙つけ難く、若げのいたりともいうべき過激な詩篇をよく伝えている(フランス語はよう解らんけど)。
 個人的には堀口の訳でランボーに出会った。当時高校生の自称・文学系不良少年は彼の詩篇に圧倒され失禁し完膚なきまでに打ち負かされた。今を生きるこの俺がなにか言う前に、すでに奴によってすべては語られ尽くしているという、筆舌に尽くしがたい敗北感とカタルシス。

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コメント

トラックバックありがとうございました。こちらからもTBさせていただきました。
神はなんて臆病で、無責任なのでしょうか。人間が最も神を必要とする局面で、何もしないで微笑んでいる神なんて、木偶の坊と同じです。

投稿: BANYUU | 2005.01.07 11:07

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