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2004.09.08

ベスランの悲劇

 もう2週間経つというのに、捻挫した手首の痛みがなかなかとれない。ずっとこのままかと弱気になってしまうなあ。


☆天災よりも恐ろしいもの

 俺の住む街にも台風が直撃した。夜明け前からの風雨の音にこれほど緊張したのはいったい何年ぶりだろう。今日は職場に出て行くこともできず、自宅待機。結局、仕事はキャンセルとなった。
 火山の噴火、地震、台風と、自然の力を思い知らされるニュースが続いたわけだが、そのどれよりも恐ろしいのは、人間による暴力。岡山の小学生殺害事件、北オセチアの悲劇。パレスチナやイラクでの暴力。個人的な殺人であれ、テロあるいは正義の戦争であれ、暴力は先に行使したら、あるいは先に行使させたらおしまいだ。憎しみはどこかで断ち切らなければならないはずのだが、今の俺には愛する人を暴力によって失った人々にそれを諭す自信はない。無力感に苛まれる。何ができるだろう。せめて今は、やられたらどうすべきかより、どうすればその連鎖を断ち切れるのかということを考えてみたい。

 FAIRNESSさん「戦争へ導く主役」というエントリの、戦争へ導く主役は、おそらく俺たち人間ひとりひとりの中にいるという結論に刺激され、ちょっと思い出したことがあった。


☆戦争は大規模な殺人である

 あちこちでよく聞かれるような通俗的な意味ではない。まだ冷戦たけなわの1980年代初頭、カール・セーガン(1934~1996)は、著書「COSMOS」のなかで、イギリスの気象学者で、物理学者でもあるL.F.リチャードソン(1881~1953)の「死者ひとりの争い(個人的な殺人)と全人類を死滅させるような最大規模の戦争(たとえば全面核戦争)とは、連続した出来事の両端である」という説を紹介している。

 人間社会では、殺人は日常的に起こっているが、大規模な殺し合いはたまにしか起こらない。争いの規模と発生確率は反比例する。これは気象学者らしい統計学的な考察のはてにリチャードソンがたどりついた結論だ。そしてセーガンもまた、この立場を支持した。

「私たちの暮らしがおびやかされたり、自分自身に対する幻想が侵されたりすると、私たちは、いや、少なくとも私たちの一部は、相手を殺してやりたいほどの怒りを感じる。
 同じような挑発が国家に対して加えられたときにも、人びとは、ときどき、相手を殺したいほどの怒りを感じる。その怒りは、しばしば、個人的な権力や利益を求めようとする人たちによってあおり立てられる。
 しかし、殺人の技術が進歩し、戦争の被害が大きくなってきたので、大きな戦争を起こすためには、きわめて多くの人たちに同時に、相手を殺したいほどの怒りを感じさせなければならない。マスコミの機関は、しばしば国家の手に握られているので、このような怒りも、容易にかもし出すことができる。」
 --- カール・セーガン「COSMOS」木村繁 訳 ---

 人が誰かを殺したいほど憎むとき、すでに戦争はどこかで静かに始まろうとしているのだろうか。
ベスランで亡くなったすべての人々の冥福を祈る。


SETI@homeをめぐるちょっとしたさわぎ

スラッシュドットジャパンによると、SETI@homeが地球外生命からの信号の可能性がある信号をキャッチしたというニュースがあちこちで流れた。さすがにちょっと信じられなかったが、映画「コンタクト」を思わせるロマンを感じたのは俺だけじゃなかったみたいね。でもどうやら可能性は限りなく低いみたい。でもこれでSETI@HOMEの活動に参加する人が増えればそれはそれでいいのかもしれないね。
 最近、俺もかかわっているクルマのファンサイトのBBSで、なぜかチームを組んでSETI@HOMEへ突入しようということになった。俺もPC環境がととのえばやってみたいと思っているんだけど、電気代がちと心配。

 そもそも地球外知的生命(ETI)なんて、その存在を無闇に信じるとあの映画に出てくるUFO信者みたいに一種の宗教になっちゃうから、科学の子らしく気長に待ちましょうよ。生きているうちにその日が来るといいねってスタンスで。
 でもいったいどんな生命体が存在しうるかの想像を巡らすくらい許されるよね。

 「宇宙の組織と構造が自分たちの願いや好みと大きく食い違っていたとしても、その真実をきわめようという勇気を持った人たちは、宇宙のもっとも深いなぞを解き明かすだろう。」
----カール・セーガン「COSMOS」木村繁訳----

 カール・セーガンは、科学者が世界や宇宙に対峙するのと同様のスタンスで、人間社会をも見つめようとした科学者だった。

「どの国も、どの宗教も、どの経済体制も、どの知識も、私たちが生き残るのに必要な答えのすべてを持ってはいない。いまある社会体制よりも、はるかによく機能する体制が、数多くあるに違いない。科学的な伝統の中でそれを探すのは、私たちの義務である。」
----カール・セーガン「COSMOS」木村繁訳----

 科学的考察の果てにある俺たち人類の未来社会? 知識と想像力に乏しい今の俺には想像もつかないなあ。
 せとともこさん最近のエントリで引用されていた言葉を思い出す。
「真実は、それが常にそうであうように、はるかに異様なものにちがいない」
----A.C.クラーク----

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コメント

TBありがとうございました。
一時エントリーがなかったときは体調が悪化したのかと心配しました。
いつも私の知らない「言葉」を紹介していただきありがとうございます。
科学的思考の「アプローチ」、どんな物になるのでしょう。
科学である以上「普遍」を追求するのでしょうか?
私も想像つきません。

投稿: FAIRNESS | 2004.09.08 14:49

 FAIRNESSさんお久しぶりです。仕事柄夏は忙しいので、まったくエントリあげることができませんでした。

 科学の法則のように「普遍」というものがあれば素晴らしいのですが、危ないのは、どこか国の常識をまるで物理法則かなにかのように絶対視し、他者に押し付けようとすることでしょうね。
 二期目の選挙中のあの人や、メッキがはがれてきた「いろいろ」の人だとか。

 そういえば昔のキリスト教の宗教論争に「普遍論争」というのがありました。普遍の法則というのは確かにあるような気がしますが、どういう形で現れるかはその環境次第なのでしょうね。

投稿: Rough Tone | 2004.09.10 22:49

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