« 進化論とキリスト教原理主義 | トップページ | 荒野の果て »

2004.11.23

What Mad Universe!

 フレドリック・ブラウンの「発狂した宇宙」"What Mad Universe!"をはじめて読んだのは、中学2年生のころだ。俺がこの作品を知ったのはすでに作家の没後10年以上たってのことだった。いまからおよそ半世紀も昔の1949年に刊行されたこの作品を、ハヤカワ文庫の稲葉明雄氏の訳で読んだんだけど、はたしてまだ版を重ねているんだろうか。
 40年代アメリカのSFパルプ・マガジン全盛期の雰囲気をも伝えるこの作品。特筆すべき点は、40年代末のこの時点において、作者のすでに完成された感のあるSFの批評精神が、単に科学だとか文明だとかではなく、およそあらゆる対象に向けられている点である。当時のSFそのものへのパロディさえも交えている。
 ジャンルとしてはいわゆる多元宇宙をテーマとした作品に分類される。この分野には優れたものが多く、ディックの「高い城の男」や「宇宙の眼」が広く知られているが、現実が徐々に異化していくさまを描くブラウンのこの作品も、決して劣らない傑作だと思うよ。
 ハリウッド映画のような息もつかせぬ展開も見事だけど、物語のプロットも、作者の推理作家としての才能がいかんなく発揮されて痛快。物語後半の、この異世界の構造の説明がなされる部分でのたたみかけてくる迫力はすごい。物語の端々に埋められた伏線の存在にも改めて気づかされ、驚かされる。そして結末もまた、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のごとく、極めてハリウッド的なご都合主義!
 かつて中学生のときに心に描いていた総天然色のイマジネーション。21世紀を迎えた現在、メッキーやドペル、ルナンやわれらが主人公キースらが、スクリーンを縦横無尽に駆け巡る姿も見てみたい気がする。現在のハリウッドの映画技術で、実際にはやってこなかった「まぼろしの1970年代」を映画化してほしいものなんだが。

|

« 進化論とキリスト教原理主義 | トップページ | 荒野の果て »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19737/2038965

この記事へのトラックバック一覧です: What Mad Universe!:

» 青く輝くイリュミネーションは、宇宙でもあり脳でもあり [裏・21世紀の歩き方大研究]
新宿のマイシティに、不思議なイリュミネーションが登場している。 クリスマスないし [続きを読む]

受信: 2004.11.23 08:56

« 進化論とキリスト教原理主義 | トップページ | 荒野の果て »