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2005.06.13

2001:A Space Odyssey

 スタンリー・クーブリックの映画「2001年宇宙の旅」"2001:A Space Odyssey"が好きだということは以前に書いた

 俺にとっての「2001年」というものは、現在の若い人たちにとっては、カルトなファンのいるアニメ作品のようなものといったところだろうか。この映画に関しては、われながら一種のオタクあって、誉められたものではない。

 海外のSF小説を読むのが好きだった中学時代、なぜかクラークには特に惹かれるものがあった。クラークの描く未来のヴィジョンの鮮明さというか、ディティールへのこだわりが好きだったのだ。
 巷ではすでに俺がまだ小学校高学年の頃、「スターウォーズ」の登場で特撮技術に一種のブレイクスルーが起こって、SF映画ブームとよばれるものがはじまっていた。「スターウォーズ」も物語そのものは楽しめたが、一種の冒険活劇といった感じで、自分のなかで「SF」には分類していなかったように思う。一方で、あのクラークが原案を書いたという映画「2001年宇宙の旅」は、名作だと噂には聞いていたが、実際にはいまだ見たことのなかったため、興味は募る一方だった。

 1981年、テレビ朝日系の「日曜洋画劇場」で念願の「2001年」がはじめて放送されたのだが、当時、家にはまだビデオデッキもなかった。結局、まだ高かったVHSテープを買いこんで、近所の親戚に録画を頼んだのだった。繰り返し見たおかげで、故・淀川長治さんが解説で「若い人は大喜びでしょう」と言っていたのも鮮明に覚えている。実際俺は大喜びだった。HAL9000はもちろん、ボウマン船長やフロイド博士などの当時の吹き替えにもおおむね満足だった。
 余談だが、このときフロイド博士役のウィリアム・シルヴェスターの吹き替えを担当されたのは、ウルトラマンや仮面ライダーなどに出演されていた故・小林昭二さんであった。

 さて、時は過ぎ、ネット時代。この映画についてのサイトは早くから海外には多かったのだが、やはり日本人のファンの意見を聞いてみたいと思っていた。そんななかで知ったのが、BANYUUさんの運営されている「21世紀の歩き方大研究」(当時は「2001年の迎え方大研究」)という有名なページ。俺も実際の来るべき新世紀を前に、このサイトに魅了されじっくりと拝読した。

 ここには、「『2001年宇宙の旅』フォーラム全記録」という記事もあり、1992年1月12日、東京・六本木で行われたシンポジウムのおよその内容を知ることができる。1992年1月12日というのは、じつは劇中でのHAL9000型コンピュータの起動された日。いわば誕生日を記念しているらしい。

 HAL9000といえば、このサイトには「HAL9000のスクリーンセーバ」がある。Windows版と旧MacOS版があるが、画面に表示されるのは、映画の中で出てくるあの表示画面だ。Flashアニメーションのものは出来もよく、ディスカバリー号のコンソールの雰囲気をうまく再現している。LinuxやMacOSXユーザーは、Flashのファイルそのものもダウンロードできるので、自分でスクリーンセーバユニットを作ることもできるのではないだろうか。
 このスクリーンセーバ、デフォルトではHAL9000があの声でときどき「喋る」。オフィスなどでこのスクリーンセーバを設定していると同僚を驚かせること必至なので、音声をオフに設定しておくことをおすすめする。

 蛇足だが、この映画が製作された1968年には、フラットなカラーディスプレイなどあるわけもなく、撮影時にはリアプロジェクターによって苦心してひとつひとつの画面を表示していたとのことだ。1984年に製作された続編の「2010年」"2010"では、コンソール画面に本物のブラウン管のディスプレイを使っているのだが、今見るとなんだかとっても古臭い。いや、前作を知る者が見れば1984年当時でも古臭く見えたはずだ。ローテクが生んだ苦肉の策がむしろ未来のインタフェイスを予言しているというのは皮肉だ。

 いまでも書架に置いてあるのが、"Making of Kubrick's 2001"という本。こちらは、ジェローム・エイジェル編の「2001年」の撮影秘話から、公開後の反響、作品に対するさまざまな解釈、社会的な影響まで網羅した有名な著作である。俺も中学のときこの原書を入手し、辞書を片手に悪戦苦闘しながら読み進めたが、それでも大変面白かったのを覚えている。このペイパーバックの中ほどには、有名な「無重力トイレ」の注意書きが全文掲載されていた。このページのコピーをとって、自宅のトイレや高校の男子トイレの前に貼っておいたが、このジョークをわかってくれるひとは、我が家にもわが高校にも皆無だった。
 それにしても、この映画の公開から、当時ですら十数年経っていたのに、洋書を扱っている書店で、数冊も入荷しており、簡単に入手できたのは、いまから考えてもなにやら不思議な感じがする。

 こちらのサイトでは、山川コタチさんという方が、日本では未刊行におわったこの本の全訳をおこなっている。わかりやすい訳で改めて読んでみると、やはり興味深い発見がある。まあ、当時中学生だった俺に英語力が決定的に不足していたことは間違いないが、今だってさして変わりはしないのが大問題である。

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コメント

Rough Toneさん、こんにちは。僕のサイトを紹介していただいてありがとうございました。
2001年宇宙の旅フォーラムから13年も経ってしまいましたが、あの映画は全く色あせることなく、むしろ21世紀になってから一層、その現代性と先見性、哲学的な深淵さを感じさせてくれますね。
これは21世紀の黙示録であり、人類のバイブルといってもいいと思います。

投稿: BANYUU | 2005.06.15 19:12

当方にトラックバック&コメントどうも~。
先日『0011ナポレオン・ソロ』(子供の頃よく見ていたスパイものTVドラマ)の初回(1964年)の再放送を見てたら、そこに出て来たコンピューターの出力形式が音声だったのです。音声出力というのは当時としてかなりススんでいるのではないか、と一瞬思ったのですが、よくよく考えたらモニターをつないで画像や文字を出力するという概念が一般にはまだ無かったのではないかと思ったのです。(あくまでも推測ですが)
『2001』の制作は実際には1965年頃には着手していたらしいから、あまり時代的に差が無い。そんなのを映像で実際に見せてしまったキューちゃんエライっ!とまたまた思ってしまいました。

投稿: さわやか革命 | 2005.06.16 00:08

>BANYUUさん

 いえ、こちらこそ勝手に紹介してすみませんでした。事後になりましたがあらためてメールにて連絡させていただこうと思っておりました。

 21世紀はどんな世紀となるのか、はじめの5年間の出来事がそれを暗示しているのなら辛いものがありますね。
 未来に絶望はしないつもりですが、焦燥感は大いにあります。クラークの信じたような人類の英知というものが本当にあるのか、あるいは、どこにあるのか。

>さわやか革命さん

 ブログ拝見して感激しました。ジャンルを問わぬ痛快で独自な語り口に興味をひかれ、勝手にリストに入れてしまいました。

 フェミニズム、特に男女共同参画についてのの記事は興味深く拝見しました。知的な示唆を得たような気がしています。感謝しております。

投稿: Rough Tone | 2005.06.16 05:50

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