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2005.08.06

涙の流れるままに

 今日は広島慰霊の日。毎年、平和祈念式典の中継を見ながら、これまで本で読み、学校の平和教育や、学生時代に広島や長崎で見聞きしたことをもとに、原爆の惨状を想像する。だが、現実のそれを知ることはできない。
 だが、もどかしくとも、想像することをやめるわけにはいかない。戦争も原子爆弾の惨禍も、現代へとひとつづきの世界の歴史の中でおきたことなのだ。はるか古代の大災害のような、風化した記憶にしてはならない。

 秋葉・広島市長の平和宣言は素晴らしかった。人類は核兵器について相変わらず懲りていないように見えるけれども、格調高いこの宣言を聞けば、まだなんとかなりそうな気がしてくる。毎年この式典を厳粛に受け止めることで、日本人としてなんとか歴史に向き合うことができる。

 しかし、わが国の首相のあいさつは例年のごとく、中身のまったくない虚ろなものだった。この男が喋り始めると、怒りのあまりテレビのチャンネルを思わず変えたくなってしまうのも例年どおりである。
 唯一の被爆国の首相がこの式典に来ないとなると批判を浴びるからいやいやながら来るのだろうけれども、こんなにブザマな挨拶をするくらいなら、官房長官かなにかに代わってもらえばよい。60年たった今も原爆症に苦しみ、高齢にもかかわらず式典に参加する多くの被爆者の感情を逆撫でするよりましだ。

 そういえば、昨夜の原爆についての筑紫哲也の番組には、綾瀬はるかが出演していた。きれいな女優さんだ。広島出身で、祖母の姉は被爆して亡くなったという。話を聞く彼女の眼はとても真摯に見えた。

 ポカリスエットのCMで見る綾瀬はるかは輝くように美しい。あの若くきれいな体が、一瞬にしてひとつの肉片にかわったとしたらどうだろう。あるいは、あの日に死ななかったとしても、灼熱にやかれ、苦しみぬいて死んでいったとしたら。白血病によって若い体を壊され、苦しみぬいて死んでいったとしたら。

 彼女は昨年、テレビドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」に出演し、白血病で死んでゆく女子高校生を演じていた。正直なところドラマで描かれた白血病という病気の姿には、なんだか納得がいかなかった。じつは子供の頃に見た、山口百恵の「赤い疑惑」のころから、ドラマで描かれる白血病という病気についてそう思っていた。俺の父は被爆者ではないが、白血病で死んだ。俺が6歳の頃のことだ。父のが臨終の日、さまざまな管を体に通され、苦悶の表情を浮かべていたことを今も鮮烈に覚えている。父の名を呼ぶとそれでもすこしだけまぶたが動いたことも。

 綾瀬はるかには、前世紀における吉永小百合さんのような女優になってもらいたい。

 NHKで平和巡礼2005コンサートを見ながら書いている。オペラ歌手の佐藤しのぶさんの歌う、ヘンデル作曲の歌劇「リナルド」より「涙の流れるままに」"Lascia ch'io pianga"が流れてきた。世界はこの60年を無意味に過ごしたのだとは思いたくない。

※前にも書いたのだが、8月6日は、俺の誕生日である。

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コメント

Rough Toneさん、TBとコメントありがとうございました。秋葉・広島市長の平和宣言、強烈な感銘を受けました。「汝殺すなかれ」の叫びは、日本国憲法とともに世界に訴えつづけていく必要があると思います。
被爆体験の風化は深刻な問題です。高齢化する被爆者たちの次の世代である僕たちの世代が、どれだけこれを後世に引き継いでいけるかに、かかっていますね。それにしても、アメリカ国民の57%がいまだに原爆投下を支持しているとは、気がめいる思いがします。

投稿: BANYUU | 2005.08.06 23:10

ちょいと遅れましたが、お誕生日おめでとうざいます。♂に言われてもナニかもしれませんが。

高校野球では、広島代表の高校生らが全校で黙祷することを提案したら、高野連から止められたとか言うニュースが流れていましたな。「広島だけの問題だから」とか。どういう発想するとこういうことになるのか。

投稿: 闘うリベラル | 2005.08.07 14:21

トラックバック&コメント、ありがとうございます。

甲子園での黙とうに関しては「広島だけの問題」とは言っていない、と、高野連関係者が抗議したりと、事実関係がよくわからなくなっています。
でも、そういう問題ではなく、広島について、長崎について、原爆について、どう思っているんだ!! という私の怒りは収まりません。

原爆の被害にあった方の気持ちなんてわかりっこないんだけど、想像をやめてはいけないんだと、私も思います。
だって、それぐらいしかできないんだから。
それぐらいのことは一生懸命やろうよ、繰り返さないために。

投稿: gegenga | 2005.08.07 22:19

遅ればせながら・・・
お誕生日おめでとうございます。

「原爆についての筑紫哲也の番組」を
見たいと思って、ブログにまでメモして
おいたのですが・・・
いつもと同じ放送時間だと勝手に思い込み
録画セットをせずに、仕事から帰宅したら
もう終わっていました(汗)

残暑厳しきおり、くれぐれもご自愛くださいませ。

投稿: heteheete | 2005.08.08 11:13

広島市長の平和宣言は、首相の無味乾燥な挨拶にくらべ毎年すばらしいものがあります。私も一昨年、自著のあとがきに「国連憲章や日本国憲法さえ存在しないかのような言動が世を覆い、時代はまさに戦後から戦前へと大きく舵を切っている」という部分を引用し、近くはブログをはじめた動機にもなりました。

投稿: ましま | 2005.08.08 22:44

遅くなりました。
明日は8月9日ですね。

この度、新しいブログを立ち上げました。
まったく勝手が違うので、まだ思うようにいきません。
公開するには自信がありませんが、ぼちぼち手直ししていければと思います。
よろしければ、一度見てやってください。まだ、あいさつ程度しかアップしていませんが。
http://hula.seesaa.net/

投稿: n_ayada | 2005.08.08 23:32

みなさん、こんちには

> BANYUUさん

>> 高齢化する被爆者たちの次の世代である僕たちの世代が、どれだけこれを後世に引き継いでいけるかに、かかっていますね。

 おっしゃるとおりです。広島の原爆資料館では、若いボランティアの人たちが、原爆の語り部から受けついた原爆のありさまを語ってくれます。私たちも真摯にそれを受け止め、後の世代に語り継ぐだけのものを知っていなければならないと、本当にそう思います。

 私は学生のときから社会人になるまで、何度かボランティアで原爆のパネル展の展示のイベントや原爆映画の上映にかかわった経験がありますが、語るべき言葉はほとんどが借り物でした。いまは、どういう因果か若い人にものを語る仕事をやっているので、なんとか原爆というものの恐ろしさを理解して、それをできるだけ若い生徒や学生に伝えていこうとと思っています。
 今は毎年広島あるいは長崎に出かけて、原爆とそのむごさについて知り、理解しようと努めてはいるのですが、被爆者の方のさまざまなお話を聞くたびにいまだその壮絶な経験に胸が苦しくなります。自分の知りえた原爆についての知識はまったく十分ではないと思い、歯がゆいものがあります。

> 闘うリベラルさん、 gegengaさん

  黙祷の一件についてですが、そもそも一校だけといわず、呼びかけるだけなら自由にやらせればよかったと思います。朝日の社内連絡の不行き届きとか、毎日新聞の勇み足とかいろいろ言われていますが、本当だったら原爆犠牲者への黙祷は高校生に自主的にやらせていいと思いますね。開会式の前なんだし、平和を願う生徒の行為にいちいち許可なんて必要なかったはずですよね。

 でも、本当はこれはうれしいニュースだと思っています。若い人たちはやはり捨てたもんじゃないことを知って、ちょっとうれしかった。


>heteheeteさん

 私の誕生日の翌日は立秋なんで、暦の上ではもう秋。おっしゃるようにもう残暑なんですよね。
とはいえ毎日本当に熱いですね。じつのところ浪人生に加えて中高生が夏休みなため、夏期講習で講義もふえてほんとはちょっと疲れぎみなのですが、この時期はまだ受験のプレッシャーはないので、精神的にはずいぶん楽ですね。

 普段は午後から夜にかけて仕事があるのですけれど、この時期は皆さんと同じように朝から夕方にかけての仕事なので、この時期だけは社会人らしくなった気がします。


>ましまさん

 おっしゃるとおり、広島市長による平和宣言は本当に感動しました。被爆者への深い哀悼の気持ちと、現在の核保有国や、核保有願望を持った国々を断固として糾弾する鋭さをもった素晴らしい宣言でしたね。
 ネットの多数(にみえるだけでしょうが)の世論は必ずしもリアルな世論そのものではないにしろ、急速に右傾化していく言論は気がかりです。近隣諸国を敵視し挑発し、無闇に「愛国心」をあおる傾向は、あきらかに戦前回帰です。ファシズムはこんなふうにやってくるのでしょうね。でも、この国の人々も、隣国の人々も、このような扇動や挑発に乗る愚かな人たちは21世紀にはごくわずかだと思いたいですね。


>n_ayadaさん

 ブログ、心機一転してはじめられたのですね。これまでのブログを閉じられるとのことで心配していたのですが、安心しました。さっそく見に行きますね。

最後になりましたが、
闘うリベラルさん、heteheeteさん、
誕生日を祝っていただき、ありがとうございます。

投稿: Rough Tone | 2005.08.09 00:55

トラバどうもです。
高野連の「広島だけの問題だから」発言、初耳でした(おはずかしい)。んでも、この発言はどういう考えからくるのか?原爆の記憶は、全ての日本人、ひいては世界にすむ全人類の問題だと追います。
今日は、9日。ナガサキを考え直す日です。

投稿: じゃかりご | 2005.08.09 09:44

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