2004.05.28

イマジニア

きみはいつもそう言っていた
私のことは誰もわかってくれないって
でもぼくは思うよ
きみのことは誰にもわからない
きみはきみの言葉をしゃべってる
本当にわかってあげたいと思った
きみの想像の世界を理解しようとしたさ
見えるものしか信じられないんだよ、ぼくは
どこかにあるはずのものや
あるかもしれないだけのもの
そこにあるけど見えないものや
きみにしか見えない不思議なもの
言葉にできないせつない思い
悪いけどぼくは信じない
ぼくにわかるのは
きみがそこにいることだけ
きみがぼくの前で振る舞うことだけ
ぼくはきみの前にいるだけ
きみは本当の言葉が欲しいっていった
でもぼくのいうことはわからなかった
一度は通じたと思ったさ
きみに想いを伝えるのに
言葉を選べなくて歯がゆい思いをした
ひどく自分を責めたこともある
だから、愛の魔法なんて信じない
愛の言葉なんてのはまやかし

                ※                  ※

 もうかなり前に終わってしまったが、NHKで放送されていた「アリー・マイラブ」というテレビドラマ。主人公は理想の男性とめぐり合うことを夢見ているキャリアウーマン(弁護士)。だから感情移入はちょっと難しかったね。でも、その他の登場人物が曲者ながら魅力的な奴ばかりなので、主人公に感情移入できなくったって、登場人物の関係に自分自身の人間関係を投影できるところもあって、いつの間にかはまって見ていた。登場人物が自分と同世代の人間だということもあるのかもしれない。特に、主人公と主人公のかつての恋人で、後に劇中で死去する同僚のビリーとの会話は、自分自身の経験も思い出されてすごく刹那かったよ。

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2004.04.30

言葉について

 10年くらい前にはやったトレンディ・ドラマって言葉。もはや死語かもしれないけれど、結局似たようなドラマはいまだに量産されている。タイトルやキャッチフレーズにひところよく使われたのが「愛」って言葉。「純愛」「究極の愛」「世紀の愛」「愛のなんちゃら」・・・口にするのは恥ずかしいけど、本当はみんな好きなんだよねえこの言葉。

 ドラマの登場人物たちは皆「愛している」はずの異性とのコミュニケーションに苦しんでいる。でも、自分の気持ちを表現する語彙が希薄であるがゆえに苦悩し続けているのは、何もドラマの中の主人公たちだけじゃない。誰だって一度は燃えるような恋をしたことがあるだろう。気持ちのすれちがいに夜も眠れぬほど悩んだ経験もあるだろう。だから登場人物がどんなに生活感がなく、浮き足だっていても、見ている連中にはある種の共感を呼ぶことができる。自分を表現する「言葉」をもたないがゆえ、相手の「言葉」の背後にあるものが理解できず、自分の気持ちを伝えることはむしろ「優しさに欠ける」と思ってる少年少女(あるいは元・少年少女)は特にね。

 なにも口先だけで愛を語れと言っているのではない。好きな異性に対する愛情の表現というか、自分の気持ちを伝える手段はいろいろ考えられる。でも、観念としての「愛」というものが実在するとして、どんな手段であっても、「愛そのもの」を相手に伝えることは不可能じゃないか。なぜならそれ自体に実体はないからだ。少なくとも俺たちの大半は、テレパシーを自由に扱える超能力者じゃない。俺たちは愛の存在への確信を言葉や所作や行為によって愛する人に伝え、同様に相手からも愛の存在証明を得ようとして涙ぐましい努力をしている。

 「愛は言葉じゃない」などとしたり顔に言う奴がいるが、こういう奴はその言葉だけでなく人格までも薄っぺらく見える。俺なら「愛なんてものは所詮言葉ぬきには語れねえんだよ」と言いたいね。 「愛」(何度も書いているとさすがに恥ずかしい)を語るには、互いが人生の経験の中で学んできたさまざまな表現を用いなければいけないと思うよ。愛しているからって最初からいきなり押し倒すわけにはいかんだろう。

 俺たちは頭の中に辞書を一冊抱え込んでる。人によって厚かったり薄かったり古かったりするかもしれない。その辞書は、人生とともに必ず厚くなっていく。
 言語の進歩もまたそういうものだった。言葉は多義的なものから単義的なものへと進化してきた。もちろん時とともに忘れられていく言葉もあるだろう。しかし、新しく作られる言葉のほうが、失われる言葉よりも圧倒的に多い。だから言葉の数は増えていくし、辞書は厚くなっていく。

 辞書を意図的に薄くすることは、ジョージ=オーウェルが「1984年」で描いた「新言語(ニュー・スピーク)」の悪夢。言語表現の幅を意図的に狭めることは国民を暗愚に導く。だから俺は教科書を薄く、内容を浅くしようという試みには反対する。

 少年少女よ、愛する人のためにも日本語を学ぼうぜ。


 かつて個人Webに書いた文章を大幅に削除および加筆し、文体をこのblogのものに統一して掲載した。

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